2007 年 13 巻 p. 143-157
近年,全国的に里山を再評価する動きが広がっており,保全活動を実践するボランティア団体の数は急増している。しかし,市民による里山保全活動が盛んになるにつれて,いくつかの課題も指摘されるようになってきた。こうした背景を踏まえて本稿では,里山ボランティア活動において何が課題とされ,それをどのように解決しようとしているかを探ることにより,生態学的ポリティクスの存在を明らかにした。そして,その力に抗う方法として,今日の里山保全活動の興隆を,市民が里山との関係性を豊かにするための運動として位置づけ直す見方を提示した。さらに,ボランティアの活動意欲を生かした里山づくりの具体的な提案として,身近な環境調査を通して市民が里山をデザインするという可能性を示した。