環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 環境社会学にとって「被害」とは何か
問われ続ける存在になる原子力立地点住民――立地点住民の自省性と生活保全との関係を捉える試論――
山室 敦嗣
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2012 年 18 巻 p. 82-95

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抄録

原子力利用にともない生じた事故等の事態によって日本各地の立地点住民は,程度の差はあれ生活を揺るがされ続けている。こうした現実をふまえるならば,立地点住民の生活保全はいかにして可能かという問題設定の考察が求められているのではないか。

この問題設定を考察する視角の1つとして本稿は,立地点住民にみられる自省的な態度とその態度にもとづく活動に着目し,それと生活保全との関係を分析する枠組みの構成を試みた。枠組構成にあたっては,生活環境主義の経験論から着想をえた。ただし,立地点住民の経験を把握するさいに住民間にみられる立場性の差異から出発するのではなく,住民に通底しうる経験を対象化し,それを基底に分析枠組みを試論的に構成した。その枠組みのもとで立地点住民の生活保全の可能性を指摘した。また本稿が依拠した経験論的アプローチの立場から被害論とのかかわりについて言及した。

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© 2012 環境社会学会
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