現在,さまざまな理由から資源管理主体としての地域社会に期待が高まっている。これまで多くの研究が地域社会による資源管理の合理性を実証し,管理の場における地域社会の重要性を後押ししてきた。これに対し,本稿で扱うのは,一見合理的ではない地域社会による資源管理の事例である。沖縄県今帰仁村古宇利島で行われているウニ漁は,地域社会による資源管理の成功例という評価を受けながらも,実際は意図的な失敗や後退を含んだ不安定さ(ゆらぎ)のなかで行われており,かつそのようなゆらぎを許容する態度を見せていた。しかし彼らはまた,資源が危機に陥るたびに回復する力(資源管理の弾力性)も備えることで,資源とのかかわりを持続している。考察を通して明らかになったのは,人びとは互いのさまざまな事情を考慮したり,資源との間に経済的動機だけではない強いつながりをもっていたり,刻々と変化する自然の状態を受けたりしながら,資源管理のおとしどころを探っているということであった。このような「おとしどころ」は,彼ら自身にしか見出せない。ここに地域社会が資源管理の主体となるべき理由がある。