環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 環境社会学のブレイクスルー
想起によるレジリエンス概念の再構成について
大塚 善樹
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2014 年 20 巻 p. 37-53

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抄録

レジリエンスの概念には,新自由主義的な専門家本位の理論である,あるいは保守的な機能主義理論である社会-生態システム(SES)理論を母胎にしているという批判がある。元来SES理論は,生態系の均衡を前提とする機能主義への批判として出発し,複数のアトラクタを仮定する変動に関する理論である。ところが,その変動プロセスを一定の運河化された経路に固定化して考える傾向がある。そこで,本稿では,そのような経路の可塑性を主張している生物学のエピジェネティクスの理論,および記憶の曖昧さや主体的な想起に関する社会理論を参考に,SESにおけるレジリエンス概念の再構成を試みる。現在のSES理論に含まれている記憶の概念は,危機に陥った下位システムを再生する際に用いられる上位システムの結合パターンであり,すでに伝達可能なものとして構造化されている。これに対して,まだ構造化されていない曖昧な記憶を下位システムが想起し,上位システムの記憶を書き換える,そのような記憶の可塑性がありえること,そしてそれが柔軟な強さとしてのレジリエンスには,恐らく重要であることを主張する。そのような想起の事例として,八重山地域の津波とマラリアに関する(生)物の記憶について検討する。

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© 2014 環境社会学会
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