環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 環境社会学のブレイクスルー
生に「よりそう」――環境社会学の方法論とサステイナビリティ――
福永 真弓
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2014 年 20 巻 p. 77-99

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抄録

本稿の目的は,サステイナビリティという概念に環境社会学がどのように向きあうべきなのか,その概念において何を独自に示すことができるのか,を考えることである。本稿ではそのためにまず,サスティナビリティがたんなる言葉としてではなく,統治を推進する凝集点となりつつある様子を考察し,その環境社会学における意味を探った。サスティナビリティという概念の広がりは,1990年代以降の環境問題の質的変容と絡み合いながら,科学の再編や既存の諸学問のもつ統治の形態,学問自身を変化させてきた。環境社会学では,当事者枠の拡大と価値の多様化などに伴い,ガバナンスへの寄与や実践型プロジェクトへの参画を通じて,より調査地への積極的な介入と関与が広がりつつある。このことは環境社会学において何を意味するのだろうか。その疑問は,サスティナビリティにまつわる統治が新たな分断と排除のゾーニングを行いながら,法や制度,人びとのネットワークや日常的実践を組み替えようとする中で,たんなる統治の道具に転倒されないためには,何が必要なのか,という問いでもある。本稿では,現場主義であることを手掛かりに,環境社会学の中に培われてきた「よりそい」の方法論からこの問いを考える。

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© 2014 環境社会学会
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