環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
論文
「提携」における“もろとも”の関係性に埋め込まれた「農的合理性」――霜里農場の「お礼制」を事例として――
折戸 えとな
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2014 年 20 巻 p. 133-148

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抄録

公害問題,農薬による環境汚染や健康被害の深刻化,また食品添加物等に関する危機意識の高まりとともに,1960年代から70年代にかけて有機農業は運動として展開した。生産者と消費者が市場流通を介さず直接農産物をやりとりする「提携」は,日本の有機農業運動の特徴とも言われ国外からも注目を集めてきたが,近年では関係者の高齢化や有機農産物をとりまく社会状況の変化を背景にして,すでに停滞傾向にあると指摘されていた。そのような時期に起こったのが,2011年の東日本大震災に続く東京電力福島第一原子力発電所の事故であった。放射能汚染によってもたらされた農産物の安全性問題により,この「提携」はその意義やあり方についての問い直しを迫られる事態となった。

本稿では埼玉県比企郡小川町にある霜里農場で行われてきた「お礼制」という「提携」の一事例を取り上げて,生産者と消費者の間に醸成される関係性を考察し,有機濃業における産消提携の本質を問い直す。「お礼制」にはたんなる経営思考で成立する交換の関係性や共生思想だけではなく,農が営まれる自然の理を理解した人々によって取り結ばれた,恵みとリスクをともに分かち合う関係性が存在している。本稿では,その関係性を“もろとも”の関係性と呼び,この関係性に埋め込まれている合理性を「農的合理性」として,近代資本主義的な経済合理性がもつ価値システムや論理と峻別し,その「農的合理性」に従って行動する人々の生存基盤のつながりとしての「提携」を論じる。

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