植物学雑誌
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公孫樹ノ授精及ビ胚發育研究補修
平瀬 作五郎
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1918 年 32 巻 376 号 p. 83-108

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抄録

一、いてふノ卵球ニ於テ其核ガ成育ヲ完了スルト共ニ卵細胞質ノ頂部ニハ大液泡ヲ構成ス、又同時ニ雌器窩ノ堤輪外ナル一定ノ部局ニ當レル胚乳體ノ組織面ヨリ分泌スル酸性液アリ、此三者間ニハ關聯スル處アリトス。
二、堤輪外周ナル分泌液量ハ胚珠心裡ノ腔洞内ノ氣體ヲ全然驅除シ、之ニ代リテ該洞内ヲ充スニ足レリ。此浸潤液ヲ俟テ初メテ精蟲ハ花粉外ヘ游動スルヲ得ベシ。即チ之ヲ以テ誘出液ト稱スベシ。
三、誘出液ノ分泌ハ生活原形質ノ主宰スル處ニシテ其分泌作用ニハ制限アリ。若シ主宰者ニシテ麻醉状態ニ陷レバ其制機ヲ失テ分泌作用ニ亂調ヲ來スベシ。
四、卵細胞質ノ頂部ナル大液泡ハ決潰シテ此處ニ精蟲ヲ招致スベキ收容液室ヲ準備スベシ、同時ニ該液ノ少量ハ頸細胞ノ間ヨリ滲出スルモノヽ如シ、之ヲ誘入液ト稱スベシ。
五、卵細胞質ノ頂部ナル收容室ハ數個ノ精蟲ヲ收容シテ尚ホ餘地アルベシ。即チ此處ニ數個ノ滯留スル精蟲ヲ見ルコトアルモ授精ニ與ルハ只其中一個ノミ。而テ授精後ニハ該室ハ細胞質ノ充填スル處トナル。
六、授精前後ノ卵球ノ底又ハ一側邊ニハ數多ノ大小不同ナル液泡群アリ、其消長ハ收容液泡ノ消長ニ關係ス。是蓋シ俄ニ増減スベカラザル卵細胞質内ニ收容室ヲ構成スベキ準備ノ餘地ニ當ルベシ。
七、腹溝細胞ノ形成及ビ授精状態等ニ就テ第一報告(9)ニ洩レタル處ニシテ今之ヲ詳ラカニ觀察スルヲ得タルモノアリ。然レドモ其已ニいてふ(10)及ビ蘇鐵類(9、10、13)ニ於テ夫々知悉セラレシ處ニ一致スルモノハ其説明ヲ省略スルコトトセリ。

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