あさがほ屬ノ遺傳學的研究(第二報) (承前、完)

抄録

一、黄葉(g)ハ青葉(G)ニ對シ劣性ニシテ單純ナルメンデル性分離ヲナス。
二、縮緬葉ハ普通葉ニ對シ單性的メンデル劣性ナリ。然レドモ縮緬葉ニ關與スル因子tハ其ノ形質ニ及ボス影響多樣ニシテ或ルモノハ劣性トシテ行動スルモ(縮緬性、茶台咲等)他ノモノハ優性トシテ行動スルモノヽ如シ(軟毛)。
三、G又ハgハT又ハtト無關係的分離ヲナスヲ以テ染色體説ノ見地ヨリスレバ別種ノ染色體上ニ座スルモノト謂フベシ。而シテ前報ニ於テ論述セル如クD又ハdトF又ハfトハ同一又ハ相同染色體上ニ座シ、尚V又ハvトU又ハuトニ他ノ同一又ハ相同染色體上ニ位置ヲ占メ、而シテA又ハaハ第三種ノ染色體ニアリト思考スベク、尚宮澤氏ノ實驗結果ニ依レバG又ハgハA又ハa(氏ノK又ハk)ト強度ノ「リンケージ」ヲ保有スルヲ以テ是等兩對因子ハ同一又ハ相同染色體上ニ座スルモノト認ムベシ。然ルニT又ハt因子ニ是等諸因子トハ全ク無關係ニ分離ヲ爲スヲ以テ其ノ位置ヲ第四種ノ染色體上ニ求メザルベカラズ。
四、葉形ニ關與スル因子ノ表現關係ハ較ゝ複雜セリ。即チ次ニ示スガ如ジ。
葉形 遺傳構成
並葉 KHIM
蜻蛉葉 kHIM
丸葉 KhIM, khIM
亂菊葉 KHiM, kHiM, KhiM
立田葉 KHIm, kHIm
丸立田葉 KhIm, khIm
但シi及ビm兩因子ガ各ゝ「ホモ」状ニ擔荷セラルヽ場合、如何ナル形質ノ表現ヲ來スヤニ就キテハ本文ノ未ダ解決ヲ與ヘザル所ナリトス。
五、單一因子ノ多樣的影響ト認ムベキ場合少カラズ。即チ前記ノt因子ノ如キ其他葉形ニ關與スルi及ビm因子ノ如キ之レナリ。(完)