Coleus blumei ニ於ケル發育程度ヲ異ニスル葉ノ蒸散力及ビ其一日内ノ變化ニ就テ

九州帝國大學植物學教室業績第拾壹號

抄録

以上本研究ハ Coleus blumei ヲ材料トシ、コバルト紙使用ニヨル LIVINGSTON and SHREVE 研究法ヲ基礎トシテ、發育程度ヲ異ニスル葉ニ於ケル蒸散力及ビ其一日内ノ變化模樣ヲ攻究シタルモノナルガ、本材料ノ如ク葉面氣孔ノ分布ガ殆ンド其下面ノミニ限ラレタルモノニ於テハ、上下兩面ノ蒸散力ヲ別々ニ考察スル事ニヨリテ、所謂氣孔作用トクチクラ蒸散作用トノ性質ノ異ナレル點、及ビ蒸散作用ニ對スル氣孔ノ作用ノ影響スル模樣ヲ明カニスル上ニ大ナル利益ヲ得タリ。今其研究成績及ビ其考案ノ結果ノ主要ナル點ヲ摘出スレバ、
一、主ニ氣孔ノ作用ニ由來スト認メラルル下面蒸散力ハ、主ニ所謂クチクラ蒸散作用ニヨル上面蒸散力ニ比シテ遙カニ大ニシテ、下面蒸散力即チ氣孔蒸散力ハ、發育完成期ニ在リト認メラルル葉ニ於テ最大ニシテ、之ヨリモ若キ又ハ老ヒタル葉ニ於テハ小ナルヲ見ル。然ルニ葉ノ上面ニ於ケル蒸散力即チクチクラ蒸散力ハ發育完成期ニ在リト認メラルル葉ニ於テ却テ小ニシテ、之ヨリモ若キ又ハ老ヒタル葉ニ於テ大ナルヲ示ス。然シテ葉ノ上下兩面ニ於ケル蒸散力ノ平均價ハ下方ノ葉程大ニシテ、上方ノ葉ニ至ルニ從ヒ順次減退シ、最上葉ニ於テ再ビ増大スルヲ見ル。
二、一日内ニ於ケル葉面蒸散力ノ變化ハ上面ニ於ケルヨリモ下面ニ於テ大ニシテ、コハ一面ニ於テ氣孔蒸散作用ノ變化ハクチクラ蒸散作用ノ變化ニ比シテ大ナルヲ意味スルモノト解セラル。然シテ發育ヲ異ニスル葉ニ於ケル其變化ノ程度ヲ(一)其平均編差又ハ最大値ト最小値トノ比、又ハ(二)13-14時ニ於ケル蒸散力ト22-23時ニ於ケル蒸散力トノ比ニヨリテ考察スル時ハ、蒸散作用ノ一日内ノ變化ハ上面下面何レニ於テモ、葉ノ發育程度ノ進ムニ從ヒ増大シ、發育完成期ニアル葉ニ於テ最大トナリ、葉ノ考境ニ入ルニ及ビテ再ビ減退スル傾向アルヲ認メラル。然シテ葉面蒸散作用ノ一日内ノ變化ニ對スル有力ナル一原因トシテ氣孔ノ生理作用ノ關與シ居ル事明カニシテ、此點ハ尚上面蒸散力ノ下面蒸散力ニ對スル比又ハ其13-14時値(最大値)ト22-23時値(最小値)トノ比ノ考察ニヨリテモ推知シ得ラル。