あさがほノ諸器官ニ於ケル色素生成ニ關スル遺傳生理學的研究 (豫報)

抄録

1、花色、花筒色、莖色等ノ生成ニ關與スル遺傳因子C^a.C並ニRノ化學的性状並ニ其等因子間ノ生理化學的關係ヲ明ニナナント企圖セリ。
2、遂傳實験ハC.C^aハ各單獨ニテハRト色素ヲ生成セザルコトヲ示スヲ以テR又ハR^tガ作用シテ、花冠、花筒ニアントチアンヲ生成セシムベキChromogenic substancesハCトC^aニ因子ニ關與スル物體ニヨリテ生成サルルモノト考へラル。而テ、ソノChromogenic substanceハ化學的處理ニヨリテフラヴオンナリト考ヘラル。且ソノフラヴオンハ側ベシゼン核ニOH又ハOCH₃ヲ有スルモノナルベシ。フラヴオン生成ニ關與スルト考ヘラルルC・C^a兩因子ガ如何ナル化學物質ニ關與スルカハ不明ナリ。而テ、花冠ハC.C^aニョリテ生成サル、フラヴオンガ1種ノenzume R^tニテ還元サレテ生成スルアントチアン色素ニテ着色サレ、花筒ハ同フラヴオンガ1種ノenzume Rtニテ還元サレテ生成スルアントチアン色素ニテ着色サル、モノナルベシ。
3、莖色ハ柴田博士ノ所謂Colourless Anthocyaninナル化學組成未知ノ物質ニ關與スルX因子並ニC^aトRニテ生成サルルアントチアン色素トPhlobaphene色素ヲ含ム。而テ、C^aトXトハ同一物質ニ關スル同一因子ニ歸スベキモノカ、或ハ特別ノ關係ヲ兩者ノ間ニ存スルモノナルカ不明ナリ。
4、種子ノ色素モ前記化學組成未知ノ物質ノ酸化ニョリ生ズルPhlolophenes色素ト考ヘラル。而テ、ソノ酸化完全ナル時ハ黒色ニ不完全ナル時ハ茶褐色トナルナラン。
5、五種ノ遺傳組成明ナル植物ノ白色花ヲ比較スルニ其等植物ノ黄色花、クリーム花ハ何レモCr型ニ屬スルモノト考ヘラル。
6、斑點花ニ關與スル三因子S'.S²'Sアリ。コレ等ハRニ作用シ其ノ能力ヲ支配スルモノナルベクRノ能力完全ニシテ花冠一様ニアントチアンノ生成サルルニハS1.S2ノ共存ヲ要ス。S¹.S²ノ何レカ、又ハ兩者ナキ場合ニハRノ能力ハ一様ニ發達セズ、從ツテアントチアン色素ハ斑状トナリ斑點花ヲ結果ス。
7、黄色地色因子Yガソノ能力ヲ發揮スルニハCノ外C^aノ存在ヲ要ス。而テC^a.C.Yニテ生成サレタル物質ハ恐ラクフラヴオンニシテC^a.Cニテ生ゼルフラヴオンニ比シOHノ多キモノナラン。
8、あさがほノ花冠ノ色彩ハアントチアン色素ニ基クモノニシテ其ノ色彩列ハ遺傳實驗ニ基キ次ノ如ク分チウベシ。遺傳式明色列{CaCRKPB藍色群CaCRKPb CaCRKpB}紫色群CaCRKpb紅色群暗色列{CaCRkPB灰藍色群CaCRkPb灰紫色群CaCRkpB CaCRkpb}灰赤色群暗色列ノ色彩ハ明色列色彩ニ灰色ヲ含メル所ノdull colourニシテ、コレ等明暗ニ關スルK因子ニハ明色列ノ色彩發達ニ對シテ補足的關係アルK¹.K²ヲ含ムモノト考ヘラル。
此等花色ニ關與スルK¹K².P.B等ノ因子ガ如何ナル化學物質ニ又化學的性状ト關係ヲ有スルカ今後ノアントチアンノ化學的研究ニ待タザレバ不明ナリ。
9、あさがほノ葉色ハ緑色、黄色ニ大別サルルモ、時ニ子葉白色ノ所謂白子 (albino) 出現ス。勿論コノ如キ個體ハ子葉時代ニテ枯死スルガ常ナリ。遺傅實験ハ是等葉色ニ關シG.G'.G''ノ三因子ヲ示ス。是等因子ガアントチアン生成ニ關與スル遺傳因子C^a.C.Rトノ關係並ニWILLSTATTER氏等ノChlorophylla.b., Carotin, Xanthophyll等ノ色素トノ關係ハ今後ノ遺傳生理學的研究ニョラザレバ不明ナリ。
10、あさがほノアルビンハ次ノ如ク大別サル。