ほそえがさノ生活史ニ就イテ

抄録

1) ほそえがさハ8月頃成熟シ, 雌雄同株ニシテ, 胞嚢ハ母體ヨリ脱出後直チニ配偶子ヲ放出スル。同型ノ配偶子ハ接合シ直チニ發芽スル。配偶子ノ處女生殖モ行ハレルラシイ。
2) 接合子ヲ培養スレバ單條ノ細長ノ葉體トナリ伸長シテ10-16段ノ榮養枝輪ヲ形成シ終ニ頂端ニ傘ヲ形成シかさのり特有ノ形態ヲトル。傘ハ成實枝ガ集り, 成實枝ハ子嚢ト上下冠トヨリ成ル。子嚢中ニハ胞嚢ガ形成サレ胞嚢ニハ配偶子ガ形成サレル。胞嚢ガ放出サレタ後ノ植物體ハ枯死シテ了フ。培養體ハ全身ニ石灰質ヲ被ラズ又子嚢ノ形態モ多少天然産ト相違ガアル。培養ニヨリ第2代ノ葉體ハ胞嚢作成ガ認メラレタガ第3代ノ葉體ヲ得ルコトハ未ダ出來ナイ。
3) 榮養枝輪ト成實枝輪デハ發生過程ニ相異ガ見ラレル。成實枝ノ發生ヨリスレバ, 上下冠ハ第1次榮養枝, 子嚢ハ之ニ側生シタ物ノ變形デ, 上下ノ別ハ子嚢ノ着生位置ニヨリ分タレタ物ナリト思惟サレル。子嚢ノ側生, 榮養體ノ形態トヲ考慮ニ入レレバ Acetabularia ハ Bornetella ヨリモ寧ロ Batophora ニ近縁ナラント思惟サレル。