植物学雑誌
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楊柳學貢献 第九報
木村 有香
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1946 年 59 巻 697-702 号 p. 79-90

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抄録

104) Salix Ohsidare Kimura (新種)オホシダレ. 吾國の本草學者はシダレヤナギを屡々オホシダレ,コシダレの二品に分けたが筆者の見解によれば後者は今日我等が稱するシダレヤナギ即ち Salix Babylonica L. var. Lavallei Dode であり, 前者は樹姿シダレヤナギに類するが, 枝太く葉は遙に濶大で〓〓花の柄はより長く花桂も亦より長い等の特徴を有し, 之は未記載の別の種を形成するものと考へられるので新に上記の學名を與へた. 本種は稀に栽植されるものであるが, その起原由來に關してはまだ闡明されて居ない.
105) Salix daiseniensis Seemen var. rotundifolia Kimura (新變種)マルパノダイセンヤナギ(丸山巌氏新稱).
ダイセンヤナギの葉の圓い變種である.
106)×Salix euerata Kimura (新雜種) はカハヤナギ Salix Gilgiana Seemen とヲノヘヤナギ Salix sachalinensis Schmidt との雜種と推定されるものである. 新葉の邊縁が張く反卷し, 成葉の側脈が上面凹入し下面は明瞭に凸出することはヲノヘヤナギより由來し, 多芽の形と大きさ, 托葉が披針形なること, 下出葉が長楕圓状披針形なること, 腺體の形, 花絲が有毛で且上部迄癒合すること等はカハヤナギより受けた性質と思はれる. 成葉の形はヲノヘヤナギに傾くか或はほぼ兩親の中間である. そめ邊縁の性質は寧ろカハヤナギを想はすが, 稀に現はれる鈍鋸齒はヲノヘヤナギを想はす.
107)×Salix hapala Kimura (新雜種) はカハヤナギ Salix Gilgiana Seemen×イヌゴリヤギ S. integra Thunberg と推定される. 今年の枝が有毛なること, 成葉の形と大きさ, 葉脈葉縁の性質, 葉柄の長いこと, 托葉が披針形で且有柄なること, 花穗の長いこと等により大いにカハヤナギに傾くが, 一年生の枝が多春の候紅褐色を呈すること, 葉が往々對生し旦葉脚が常に廣いことはイヌロリヤナギより受けた性質と思はれる.
108)×Salix yoitiana Kimura (新雜種) はネコヤナギ Salix gracilistyla Miquel×エゾノヤマネコヤナギ S. Hultenii Flod. var. angustifolia Kimura ではなからうかと思はれる. 小枝有毛なること, 花芽の形, 新葉の上面が長軟毛状絹毛にて蔽はれ, 成葉は上面に氣孔あり, 下面の毛の内一部が絹毛状なること, 第二家側脈がほぼ平行で且密なること, 柱頭の形, 花柱の長いこと等により前者に傾くも, 樹姿喬木状, 枝は粗にして旦短いこと, 成葉の形並に大きさ, その上面は皺縮し, 裏面には短い縮毛が見られること, 下出葉の裏面は密に長軟毛を被り, 各胎座の卵子の數が5-6個なること等により後者に傾く. 子房及び腺體の形と大きさ並に子房の柄の長さはほぼ兩親の中間を示すと云へよう.
109)×Salix thaumasta Kimura ミヤコヤナギは最初京都で發見されたがその後攝津, 越前, 武藏, 羽後等にも産することが明らかとなつた.
110)×Salix Koidzumii Kimura が千島擇捉島で採集された. 千島のフロラに新に加ふべきもの.111) Salix taraikensis Kimura タライカヤナギは千島國後島の泊, 擇捉島の紗那にも産することが明らかとなつた.
112) Salix neo-tenuifolia Kimura (新名) ホソバコリヤナギ. Turczaninow の Salix tenuifoliaには先行同名があるので上記のやうに學名を變更した.
113) Salix pyrolaefolia Ledebour 館脇操氏の昭和18年の黒龍江上流及びアルダン河流域の採集品中に1よ種々珍しい Salix があつた. 本種もその一つで滿洲では初めての採集である. 標本の一部は確實に var. cordata (マルパノゴウアンサハヤナギ館脇操氏新稱) に屬し他はほぼ var. ovata (コウアンサハヤナギ館脇操氏新稱) に收容しうると思はれる.
114) Salix nummularia Anders. subsp. pauciflora (Koidzumi) Kimura (新名) エゾマメヤナギ.Krylov 氏採集アルタイ産の Salix nummularia Anders. の標本を精檢の結果我がエゾマメヤナギは本種の亞種であるとの見解に到達した.
115) 故 Gorz 氏が1928年に發表したヤマネコヤナギ節の分類に正式記載を補記し, 同氏の subsubsectio を series に改めた.116) Salix Raddeana Lakschewitz コウアンバツコヤナギ(館脇操氏新稱). 昭和十八年館脇操氏は滿洲黒河でこのヤナギを採集された. 本種の滿洲に於ける分布は從來不明瞭なる故ここに記録する.

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