植物学雑誌
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ハマニンニクに寄生する一新麥角菌Claviceps litoralis Kawatani
川谷 豐彦
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1946 年 59 巻 697-702 号 p. 90-91

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抄録

ハマニンニクに麥角の發生する事あるは古くより知られ Claviceps purpurea (Fr.) Tulasne に由るものとして取扱はれ來つた. 著者は本邦産ハマニンニクに寄生する麥角菌に就いて精査したる結果, 之を新種とするを適當と認めて茲に記載し, 報告するものである.
麥角 (菌核) は大型, 圓筒状にして細長く丸味を帶び多少彎曲することあり, 一般に頂端に向つて漸細し又は尖頭をなし, 基端は丸味を帶びるを普通とする. 横裂は一般に存在せず, 縱溝は普通之を欠くか又は極めて淺い. 表面の色彩は褐紫色又は黒褐色を呈する. 内部は淡赤褐色の周皮部と帶白色の中心部とを區別し得る. 子座球は初め藁色乃至淡黄褐色であるが, 後次第に肉色又は赤褐色となり遂に褐紫色又は暗紫色となる. 子嚢殼は子座球の全面に埋沒する. 子嚢は細長く圓筒状をなし中に8個の子嚢胞子を藏する. 子嚢胞子は極めて細長く糸状をなし, 無色にして單胞, 長さ65-140μ, 幅0.4-1.2μである. 分生胞子は楕圓形状をなし, 無色にして單胞, 内に油滴を含む, 而して油滴は屡々兩極性に存在する, 長さ3.1-18.5μ, 幅2.3-7.1μである.
北海道, 千島, 樺太に産す.
和名 テンキ (グサ) バクカクキン又はハマニンニクバクカクキン (新稱)

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