植物学雑誌
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ヒメニラの異常成長
小倉 謙
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1955 年 68 巻 801 号 p. 76-80

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抄録

ヒメニラは小さい宿根草で, 地下に鱗茎があり, これから小さい1~2葉と1本の花茎を出し, その上に通例1花をつける (Fig 1)。しかるにある個体には鱗茎から細長い匐枝が出て水平に走り, その先が膨らみその上に1葉をつけるものがある (Fig. 2)。普通型のものと匐枝を有するものとの発達過程を知ることは現地では困難なので, 栽培実験によつて確めた。
その結果を要約すれば (Fig. 6), 普通個体 (A, 白で示す) には翌年用の小鱗茎の外に1個の不定小鱗茎 (点で示す) を含み, 翌年この2鱗茎は夫々成長するが1はその位置で普通の個体となるが, 1は細長く伸びてその先が膨らみその上に1葉をつけるが (点で示す) 普通鱗茎及びこの匐枝上の膨らみの中にも2小鱗茎(線で示す)が生じ,その翌年に至り夫々普通型及び匐枝を有する個体 (C, 線で示す)に発達し, 各々に夫々2小鱗茎が生ずる(クロスで示す)。
以下これを繰返えすので, この匐枝により, 原体から遠いいろいろの方向に新しい個体を分布することができ, これはこの種の営養繁殖に適応した形質といえよう。

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