植物学雑誌
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密度の異なる植物集団の生長におよぼす養分の影響
無機栄養からみた植物群落と土壌条件の関係 III
手塚 泰彦
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1960 年 73 巻 859 号 p. 7-13

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抄録

栽植密度による個体あるいは群落の生長のちがいと養分要因の関係を明らかにするため, 密度を変えたカラシナ (Brassica cernua) の水耕実験およびソバ (Fagopyrum esculentum) の圃場実験を行なった後者は岩城, 門司, 黒岩, 翠川等との共同研究として行なわれた7,8,9. 主な結果は次のようである. カラシナの水耕実験: 濃度1/1, 1/10, 1/100の培養液10,11)700ml. を容れた, 径18cm. のペトリ皿に, 液を更新することなく5, 17, 41個体のカラシナのめばえを水耕した. 同一密度では養分供給量が大きい程, 個体及び群落全体の生長量は増大する. 同一養分供給量では密度が大になるにつれて個体の最大生長量は減少し, 群落の最大生長量は密度に関係なく大体一定になる. この現象は養分が欠乏する時にのみ見られ, 養分要因に関するせり合が主な原因と考えられる. ソバの圃場実験: 5, 10, 20cm. 間隔に圃場に播種したソバの群落の最大生長量は密度に関係なく大体一定の値に達した. 養分要因の作用を明らかにするために, 群落内での養分の吸収量と, 単位乾物量あたりの濃度をN, P, K, Ca, MgおよびFeについて追求した結果, 特に密な群落では生長の後期に窒素の欠乏が認められ, これが光要因と共に群落の最大生長量を制限していると推論された.

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