Adams 等によって提示されたオジギソウ成分ミモシンの構造式からミモシンは代謝拮抗物質としての性質をもっているものと予想されたので, ミモシンの抗菌性を調べたところ, 1/3000M以上の濃度では大腸菌の生長に対して抑制的に作用することが観察された. しかしてこの抗菌性はトリプトファン, プロリン, ヒスチジン, チロシン, フェニールアラニン, アラニン, セリンあるいはイソドール酢酸の存在によって喪失または軽減されることが明かにされた. ところが, これらのミモシン拮抗物質を添加しなくてもミモシンによって抑制されていた大腸菌は低濃度区では培養数日後に生長を回復してきた.これは大腸菌の形成した適応酵素による解毒作用の結果, ミモシンが分解されたものと考えられ, このような培地中にはアラニンおよびセリンと思われる物質の存在がペーパークロマトグラフィーによって明らかに検出された. オジギソウ主葉枕から得た粗酵素標本によるミモシンの分解が同様にペーパークロマトグラフィーによって検討されたが, この場合はセリンに相当する物質とニンヒドリン陽性未決定物質 (大腸菌による場合にも検出された物質) のみが検出された. この酵素反応の最適pHは約8.0にあるようである. 以上の実験結果からオジギソウの睡眠運動においてミモシンが重要な役割を演ずるであろうことが論述された.