植物学雑誌
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縞枯山の植生についての生態学的ならびに生理学的研究
V. 種内競争による階級間の物質生産の差異について
黒岩 澄雄
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1960 年 73 巻 863 号 p. 165-174

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抄録

すでに報告された縞枯山第 5 Abies 森林に属する 20 年生林分における同種間競争を前報の物質生産機能や群落構造5,6)を用いて物質生産の立場から解析した.
葉, 枝, 幹, 根における乾量の年間増分の総量を個体当り年純生産量とした. 葉における増分は葉令増加にともなう一枚当り葉重増加量と葉数とから求め, 枝における増分は枝令増加による枝直径増加量と枝容積当り乾物重とから求め, 幹における増分は年輪増加量と幹容積当り乾物重とから求め, また根における増分は地上部重増分の 1/5 とした7). 年純生産量の個体重に対する比も個体当り葉重に対する比も階級木の増大にともない増加した. Fraxinus についてのデータ1) を解析した結果, 生産力の低い小個体ほど落枝率 (落枝量/純生産量) は大きかったので生長率はさらに小さくなると推論された.
大個体になるほど同化器官重の個体重に対する割合は大きく, 非同化器官重のそれは小さかった, また,大個体は小個体よりも同化率 (呼吸率もいくらか)が大きかったので, 物質生産の面で大個体ほど有利といえる. 環境条件のうち, 温度では大差なかったが, 光では大個体ほど樹冠が高く明るいところにあった.したがって, 階級間における生産力の差異は同化器官の割合, 生産機能および光要因の差異によると推定された. 以上の推論をたしかめるため, 各個体の純生産量を年総物質生産量と年物質消費量の差として計算した. 生産量は樹冠の受光量と同化率とから月気温を考慮して計算し, 消費量は各器官の呼吸率と月気温とから計算した. この値は樹幹解析にもとづいて得られた純生産量より少し大きかったが, 階級木の増大にともない急激に増加するという傾向では全く一致していた. このことは種内競争における光要因の重要性をたしかにするものである.

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