植物学雑誌
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アメリカアリタソウの春化処理
(1) ことなった処理温度が発育ならびに精油含量におよぼす影響について
大橋 裕市川 郁雄
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1960 年 73 巻 864 号 p. 239-244

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抄録

アメリカアリタソウの萼につつまれた肥果(一般に種子とよばれ播種にもちいられる)に, その風乾重の100%に相当する水をふくませて, 約25°の温度で24時間催芽後, 約35°, 25°, 15°および5°の温度でそれぞれ5日間春化し, 吸水催芽のみをおこなった胞果を対照として, 1957年4月6日, 同時に播種した.
1) 35°処理はほとんど発芽しなくなり, 25°処理の発芽率は対照とほぼひとしく, 150処理および5°処理の発芽率は対照より10%以上も増加した. また15°処理の発芽は他の処理,対照より約1日はやまった.
2) 35°処理および25°処理は約4日, 対照よ り早く花が咲いたが, 15°処理の開花は対照とかわらず, 5°処理の開花は対照より約3日おくれた. よって, アメリカアリタソウは, すくなくとも35°~25°の比較的高温で, その温度発育段階を通過しうるとかんがえられる.
3) 1株あたりの収果量はかわらないが, 果実中にふくまれている精油含量は春化により大きな影響をうけた. 35°処理および25°処理は対照にたいし数%, 15°処理は対照にたいし10%以上増加したが, 5°処理と対照間には差はみとめられなかった. 精油中のアスカリドール含量においては, 各処理, 対照間には差はみとめられなかった.
なお, 15°前後の温度で10日間および20日間春化した1955年度の実験によると, 精油含量は10日処理は対照にたいし26%, 20日処理は11%増加した.
以上の結果より, アメリカアリタソウを15°前後の温度で, とくに10日間春化することは, 精油収量の増加をもたらし, 栽培上有利であると考えられる.
また,植物の温度発育段階における温度は発育に関係するのみでなく, その成分含量にたいしても直接的な大ぎな影響力を有するらしい.

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