植物学雑誌
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電子顕微鏡による珪藻殻微細構造の研究 XVIII
奥野 春雄
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1960 年 73 巻 865-866 号 p. 310-316

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抄録

つぎの4種類の海産現生種珪藻殼の電子顕微鏡的立体微細構造について記した.
Rhizosolenia alata f. indica: 蓋殼 (Calyptra) の孔房は円形または楕円形で縦列にならび, 中間帯 (Intercalary band) の孔房は六角形で, 60°に交わる3直線列にならぶ. 孔房は蓋殻, 中間帯のいずれのものも外閉内開型で, その外膜は篩孔をもつ篩膜となり, 内膜はせまく, 中央に大きい内孔をもつ. Rhizosolenia imbricata var. Shrubsolei: 中間帯の孔房は前種と同じく外閉内開型であり, 外膜には対角線の方向に線形の篩孔が1つある. 篩孔はときに数個の小孔に分たれている場合もある. 外膜は篩孔近くでうすく, 孔房周辺に向ってやや厚さを増す. 篩膜に電子線の不透な不定形小粒子の散在する場合も見られた. 内膜は不顕著である. Mastogloia angulata: 立体写真により孔房が外開内閉型であることが判明した. 著者の前報文 (植雑, 70: 222) では平面写真から推定して孔房が外閉内開型であると記したが, それは誤りであった. 孔房は六角形を基本形とし, 横列にならび, その外膜はきわめてせまく, 孔房は外へ広く開く. 内膜は中央部がドーム状に外方へ隆起し, そのふちに環状にならんだ篩孔群がある. 珪殼の左右緑では各孔房列はさらに小さい2列の孔房群に分れている. これら2列ずつの小孔房は共通の横側膜をもつ集合孔房となる. Mastogloia apiculata: 孔房は外閉内開型で, しかも二層孔房となる. 一次孔房 (大孔房)は横走する溝状孔房で, その外側は1列の二次孔房 (小孔房) 層で閉じ, 内側は全開する. 二次孔房は光学顕微鏡的に Areolae または Alveoli と記載されたもので, その外側は四隅に1個ずつの篩孔をもつ篩膜でとざされ, 内側は内膜なく一次孔房に全開する.
第17報 (植雑, 72: 61-67) では電顕写真図版 (Pls. I,II) を網目写真版としたので, ルーペ式立体鏡で見た場合に印刷網目が見え, 珪殼微細構造とまぎらわしい結果となった. それらは裸眼による方法で見て, 微細構造を理解されたい.

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