植物学雑誌
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ヒマワリの根の一部切除による生長の変化について
戸塚 績大島 哲夫門司 正三
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1960 年 73 巻 868 号 p. 389-397

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抄録

水耕したタバコを実験材料として前報3,4)で論じた水分経済の式を用いて, 野外条件下で栽培したヒマワリの生長を解析した. 播種後39日目に茎を中心にして半径5cmの円周で側根を切断し, 側根の61%を除去した. 処理後3週間目の処理区 (B) の乾物生長量は対照区 (A) の63.1%に低下し, 伸長生長にも差がみられた (第1図). しかし, 葉の窒素含量は処理2週間後までは両区の間にいちじるしい差は認められなかった (第2表). 葉の含水量の日変化は切断2日後では (A) より (B) の方が常に低いが, 6日
後は恢復する (第2図). これは根の恢復による結果であって, 根と葉面積との割合 (active root/leaf area ratio) が葉の含水量変化に関係していることを示す (第3図). 含水量測定と平行して改良葉半法で測定した同化量は葉の水分欠乏が進行するにつれてほぼ直線的に減少した (第4図). 同時に測定した気孔の開度は強光下でもほとんど変化しなかった (第5図).
以上の諸事実にもとずいて, 生育期間中の気象条件を加味して葉の水分欠差を式 (1), (2) より算出し,さらにこの値と物質生産とを結びつけて生長量を算出したが, それは実測値とほぼ一致した. このことは根の一部切除による生長減退は, おもに葉の一時的しおれによる同化能率の低下した結果であることを裏書きする

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