植物学雑誌
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Brassica napus L. の花粉の発芽について
久保 淳
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1960 年 73 巻 869-870 号 p. 453-457

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抄録

B. napus L. の花粉は 40μ の厚さの 10% 蔗糖 60% 黄色ゼラチン発芽床で最もよく発芽した. しかし湿度 100% では吐出花粉が非常に多かった. 発芽床の厚さがうすくなるほど吐出花粉は多くなり, 厚くなるほど少なくなった. 発芽に最適な濃度の発芽床においてさえ空中の湿度が高すぎると花粉は吐出する. しかし湿室内の湿した〓紙の広さをせばめ湿度を下げると吐出花粉は減少した. そして適度の湿度では最高 98.7% の発芽成績が示された. 花粉管は庶糖を含まない 30% ゼラチン発芽床上で240μ の伸長度を示した. しかし最高の発芽成績を示した 10% 蔗糖-60% ゼラチン発芽床では1400μであった. すなわち花粉管の伸長度は必ずしも発芽成績とは伴わない.
花粉と発芽床との間には次のごとぎ水分経済が存在すると思われる. すなわち薄層ゼラチン発芽床がその潮解性と水分均衡の両作用によって空中から湿気をとった時水分は最初はその表層附近にとどまる. 花粉はこの時急速に吸水し, かつ膨潤する. 他方水分は次第に発芽床の内部に浸入しつづけるために発芽床は漸次膨潤するし, したがって発芽床表層附近の水分も少なくなる.花粉はこの時吸水を抑圧される.

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