植物学雑誌
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シダ配偶体の分化について I
モエジマシダ配偶体から単離された細胞の再生
伊藤 道夫
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1962 年 75 巻 883 号 p. 19-27

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抄録

20日間培養したモエジマシダの心臓形前葉体から任意に単離された単細胞の再生について観察した. 単離されたすべての細胞は再生し, 胞子からの生長と同様な様式をへて新しい前葉体を形成する. しかし,こうして形成された前葉体は, 正常なものより小さい細胞で成り立ち, その原糸体部もより短い.
単離後再生開始までの時間によって表わされる再生能は, その細胞が前葉体のどの部域から単離されたかによっていちじるしく異なる. すなわち前葉体の基部から単離された細胞は頂部からの細胞に比し早く再生し, 前葉体に再生能の勾配が存在する. 故に再生能は, その細胞の単離前の分裂活動と関係なく, その生理的年令あるいはそのもとの位置と関係がある.
各単離細胞の生長能力は, 再生前葉体の原糸体部の長さ (伸長能) と細胞増殖の度合 (分裂能) によって測定された. これらの能力も一つの前葉体において勾配を示すが, その傾向はお互いに逆である. すなわち基部からの単離細胞は頂部からのものより高い伸長能と低い分裂能を示す. 両能力はその細胞年令に深い関係をもっている.
なおこの実験には, 仮根細胞は単離の材料として使用されなかった.

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