植物学雑誌
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カフェー酸とケイ皮酸の生長阻害作用の比較
柴岡 弘郎
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1962 年 75 巻 889 号 p. 264-269

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抄録

さきにクロロゲン酸 (3-caffeoylquinic acid) の生長阻害作用を報告したが4), このものを加水分解して得られるカフェー酸 (3,4-dihydroxycinnamic acid) もアベナ子葉鞘切片のIAAによる伸長を阻害する(第1図). ケイ皮酸 (cinnamic acid) (10-4M) のアベナ子葉鞘切片の伸長に対する阻害の度合いはIAA濃度の低いとぎ大で, IAA濃度をあげると減少する. カフェー酸(5×10-4M)の阻害はそれに反して,IAA濃度の低いときはあらわれず, IAA濃度が高くなってはじめて見られた (第2図). カフェー酸(10-3M) をタイサイの発芽のときに与えると, 芽ばえの胚軸の生長は強く抑制される. しかし,同濃度のケイ皮酸にはそのような働きはない (第3図). 明所におけるタイサイの根の生長に対しては, カフェー酸 (10-3M)でわずかな促進がみられたが, ケイ皮酸ではみられなかった (第一表). アベナ第一葉切片のジベレリンによる生長に対し, カフェー酸 (10-3M) はなんら影響を与えないが, ケイ皮酸 (2×10-4M)はめいりような阻害作用を示した(第2表).
カフェー酸とケイ皮酸はかなり構造の似た物質であるが,生長に対する働きの内容はかなりちがったものであると考えられる.

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