植物学雑誌
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Alaria valida Setch. et Kjellm., チガイソ, エンドウコンブ, チヂミコンブおよびアラメ の胞子のう群発生について
西林 長朗猪野 俊平
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1963 年 76 巻 895 号 p. 14-23

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抄録

Alaria valida, チガイソ, エンドウコンブ, チヂミコンブおよびアラメの胞子のう群の発生が観察された. これらの胞子のう群はすべて葉体の形成表皮 から発生する.
Alaria valida では, 形成表皮の二分によって作られた下位細胞から生じた突起が, そのまま遊走子のうに発生していく様式(L type)と, 下位細胞からの突起は遊走子のう細胞にならないで側糸となり, その後あらためて生じた2回目の突起が遊走子のう 細胞になる発生様式 (A type) との両者が観察され た.
チガイソでは, A type または L type のみの場合と, この両型が混在する場合とがある. エンドウコンブでは, L type のみの個体と, A type に一部 L type が混在する個体がある. チヂミコンブお よびアラメは L type であるが, アラメの胞子のう 群が食害をうけ, その後に再生回復してきた胞子の う群は A type であった.
下位細胞からの突起は, 生殖器官である遊走子のうに発生するが, また側糸に発生していくこともあ る. それ故, 生殖器官の分化の決定は, 発生の最終 の段階でおこなわれる. また, A type の二次側糸 が発生する性質は, 非常に不安定なものである.

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