植物学雑誌
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イチョウのシキミ酸生成径路について
館岡 孝
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1963 年 76 巻 905 号 p. 391-394

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抄録

高等植物のシキミ酸生成に関して, 特に暗条件下の葉での生成を中心にしらべた.
イチョウの成葉のシキミ酸含有量は野外のもので大きな日変化を示し, 夜間いちじるしく増加する. 葉を暗条件下においた場合も同様にその初期にいちじるしく減少し, その後で元の含有量に復し, さらに相当長時間, 比較的高い含有量が保持される. 微生物で明らかにされたと同様に緑葉においてもエノールピルビン酸リン酸やエリスロース-4-リン酸がシキミ酸生成の素材になっているならば, 暗くした葉でみられた一度低下した後の含有量の回復や, その後の長時間にわたるその保持は, すでに貯えられた糖類が解糖やペントースリン酸回路などを経て記の素材に変換し, これらからシキミ酸が生成されることを推測させる. そこでイチョウとユーカリの葉に種々の呼吸阻害剤を吸収させ, 暗所でシキミ酸生成におよぼす影響をみた. その結果2,4-ジニトロフェノールの阻害は最小で, NaN3, フロリジン, モノヨード酢酸,NaFではその生成がかなり抑制された.これらの結果から解糖が少なくとも暗所でのシキミ酸の生成にあずかっていると推定できる.

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