植物学雑誌
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赤ダイコンのアントシアニンにおける水酸基置換様式の遺伝的変型
アントシアニンの研究 第42報
星 利美竹村 英一林 孝三
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1963 年 76 巻 906 号 p. 431-439

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抄録

1. アントシアニン色素として pelargonidin 配糖体をもつハツカダイコン (Raphanus sativus var. sativus f. comet) と白色のショウゴインダイコン (f. shogoin) との交雑を行ない, 色素の遺伝的関係を調べた.
2. F1 は anthocyanidin として cyanidin のみを生じ, F2 では cyanidin だけを含むもの, pelargonidinだけを含むもの, および色素をもたないものの3種類に分離した.
3. F1 のアントシアン配糖体は cyanidin 3-diglucosido-5-monoglucoside で, その構造は P植物に含まれる raphanusin に対応したものである (paper-chromatography による実験).
4. F2 における分離は, 紫色 (F1 と同一の cyaniding 配糖体): 赤色 (Pと同一の pelargonidin 配糖体): 白色 (アントシアンを含まない)が 158:55:64 の比であり, 互いに条件因子をなす両性雑種の分離比 (9:3:4) に一致する. 同様の分離比はすでに建部 (1938), 奥野 (1943) によっても報告されている.
5. この場合RおよびE因子を仮定して, P の赤をRRee, Pの白色を rrEEで表わせば, 上記の実験結果はよく説明できる.
6. RおよびE因子の生化学的基礎を解明することが今後の課題である.

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