1963 年 76 巻 906 号 p. 431-439
1. アントシアニン色素として pelargonidin 配糖体をもつハツカダイコン (Raphanus sativus var. sativus f. comet) と白色のショウゴインダイコン (f. shogoin) との交雑を行ない, 色素の遺伝的関係を調べた.
2. F1 は anthocyanidin として cyanidin のみを生じ, F2 では cyanidin だけを含むもの, pelargonidinだけを含むもの, および色素をもたないものの3種類に分離した.
3. F1 のアントシアン配糖体は cyanidin 3-diglucosido-5-monoglucoside で, その構造は P植物に含まれる raphanusin に対応したものである (paper-chromatography による実験).
4. F2 における分離は, 紫色 (F1 と同一の cyaniding 配糖体): 赤色 (Pと同一の pelargonidin 配糖体): 白色 (アントシアンを含まない)が 158:55:64 の比であり, 互いに条件因子をなす両性雑種の分離比 (9:3:4) に一致する. 同様の分離比はすでに建部 (1938), 奥野 (1943) によっても報告されている.
5. この場合RおよびE因子を仮定して, P の赤をRRee, Pの白色を rrEEで表わせば, 上記の実験結果はよく説明できる.
6. RおよびE因子の生化学的基礎を解明することが今後の課題である.