1963 年 76 巻 906 号 p. 455-458
Pinnularia brauniiは無機強酸性水域におびただしく産し, しばしば純群落をなしている. 1955年4月山形県酢川で採集した材料を180個体アトランダムにとり顕微鏡写真を撮して, その写真から変異をしらべた.
このケイ藻は var. amphicephala, var. amphicephala forma nipponica, var. moissacensis, var. gracilior, var. undulata にわけられているが, その形態から var. gracilior は Pinnularia braunii に 入れない方がよいのでこれは除外した.
酢川の材料の顕微鏡写真では var. braunii, var. amphicephala, var. amphicephala forma nipponicaは典型的なものは区別できるが, 多数の移行型があって, どれに入れてよいかわからない個体がたいへん多いので var. amphicephala, var. amphicephala forma nipponica は var. braunii の synonym にすべきである. これらの個体に混じってくびれの少ないずんぐりした個体がみられたが, この型は小型のものにだけみられるので, わい小型と考えた. この型と基本種との中間の型が多数みられたので, 今まで記録されていなかったこのわい小型も, 別の変種や品種にしない方がよい.
pH 1.4, 1.8, 2.1 の所で採集した材料をそれぞれ約300個体測定したが, 生育環境の相異と大きさや形の相異とのあいだに一定の関連はみられなかった.