植物学雑誌
Online ISSN : 2185-3835
Print ISSN : 0006-808X
ISSN-L : 0006-808X
イネおよびエンバクの発芽にともな:うめばえの酸溶性リン酸エステル量の変化
辻 英夫
著者情報
ジャーナル フリー

1964 年 77 巻 913 号 p. 247-252

詳細
抄録

イネおよびエンバクを暗所で蒸留水のみを与えて発芽させ, 2日から8日までのあいだshootの酸溶性リン酸エステル量および無機リン酸の量を測定した.
1)イネ, エンバクとも,発芽の初期にはshootの酸溶性PのうちエステルPがしめるわりあいは かなり高く, イネでは酸溶性 P のうち約50%,エンバクでは約70% がエステル型である.しかし発芽がすすむにつれてこの値は急速に低下してゆく.
2) shootの酸溶性リン酸エステル含量自身は発芽とともに増加してゆくが,これを乾量あたりでみる と,エンバクでは発芽初期の数日間に減少して一定の低いレベルにおちつぎ, その後もこのレベルが維持される. イネの場合はすこしおくれてゆるやかな低下がはじまるが,やはり低いレベルにおちつく.
3) これに対して乾量あたりの無機リン酸の量は, エンバクでは測定全期間をつうじて直線的な増加 をつづけ, イネの場合もこの期間全体としては明りょうな増加を示している.
4) エンバクの shootあたり酸溶性リン酸含量, および乾量あたりの酸溶性リン酸量は, 測定全期間 をつうじてイネよりも高い値をとっているが, 生量あたりの値ではほとんど差がない.
5) 発芽初期に, 酸溶性リン酸エステルのレベルに関して, イネとエンバクのあいだにいちじるしい差がみられる.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本植物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top