植物学雑誌
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ダイコンおよびカブにおけるアントシアン色素と共存諸成分との生合成的関連 (アントシアン色素の研究•第50報)
石倉 成行林 孝三
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1965 年 78 巻 930 号 p. 481-495

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抄録

1. ダイコン (Raphanus sativus) およびカブ (Brassica rapa) の赤•白両品種の各生長段階における 遊離アミノ酸, 遊離糖およびフェノール酸の種類と含量とを調べ, それらがアントシアン色素の生合成と どのように関連するかを検討した.
2. 実験に用いたダイコンおよびカブの4品種では, 4種類の遊離糖が共通に検出された. それらのう ち, グルコースは生長の全期間を通じて主成分とみられた. また, 白色品種と比較して, 赤色品種にはサ ッカロースとフルクトースとがより多く含まれている.
3. フェノール酸は4品種を通じて7種類が検出された. それらの多くはエステルの状態で含まれてい る. 赤色品種では, 白色品種に比べて, フェノール酸の含量が著しく多い.
4. 赤色品種の主根では, アントシアンの生成が進むにつれて, C6-C3系のフェノール酸の含量が平行 的に増加する.
5. 遊離アミノ酸は各品種から18種類が検出された. アミノ酸の全量に対する個々のアミノ酸の割合か らすると, 白色品種ではバリン, ロイシン, アルギニン, (メチオニン), アスパラギン, グルタミンが量的 December, に優位であり, 赤色品種ではアスパラギン酸, グルタミン酸, チロシンが多い.
6. 赤色品種では, アントシァン合成が高まるとき, 糖およびアミノ酸の含量は一時的に減少する.
7. 赤色品種の芽生えにロイシン, フェニルアラニン, バリンなどを個別に供与するとアントシアン合成 が促進される. なお, アスパラギン酸, スレオニンも若干の促進的効果を示す.

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