植物学雑誌
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Luzula 染色体の細胞学的研究 VII. 染色体の運動能と仁物質との関係
草薙 昭雄
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1966 年 79 巻 932-933 号 p. 114-118

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抄録

本研究は, Luzula の染色体の極への移動に中期~後期の染色体上に付着する仁物質が関係しているとい う Brown(1954) の仮説を実験的に検討した. 実験には, L. elegans (Syn. L. purpurea, n=3) の乾燥 種子に Co60-γ-線 (3000~6000r) を照射し, それらの芽ばえの根端細胞内に含まれている kinetic fragment と akinetic fragment における仁物質の量を比較し, fragment の運動能と仁物質との関連を追求した.
前報において, 筆者は H3-cytidine の短時間処理 (5~10分) でラベルされる仁•RNA が, 仁解体後染 色体に移行付着することを確めた.
この事実を Co60-γ-線を照射した芽ばえの根端細胞において検討したところ,仁•RNAは仁の解体後中 期の染色体や染色体断片上にも移行, 付着した. そこで分裂後期に重点を置いて, kinetic fragment と akinetic fragment 間で仁•RNA の付着の程度に差があるかどうかを調べた結果, akinetic fragment で は仁•RNA にほとんど付着が見られなかった. kinetic fragment では正常な染色体と同様仁•RNAの 付着が見られた. この事実は, 前期のおわりで仁物質の移動が正常におこなわれなかったような fragment は後期で akinetic fragment となることを示している.
これらの結果は, 染色体に付着する仁物質が, Luzula 染色体の後期における極への運動に重要な関連を 持つという仮説を実験的に支持したことになる.

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