植物学雑誌
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ホウセンカの胚嚢の発生について
高尾 静代
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1966 年 79 巻 939 号 p. 437-446

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抄録

ホウセンカの胚嚢の発生と, それに伴なう二, 三の問題について調べた. 胚嚢発生は, タデ型に属する.反足細胞は短命である. 極核の融合は, 胚嚢の成熟期の直前に完了する. 助胎細胞の核は姉妹核であり, 4核期の胚嚢の第1番目の核に由来する. 胚嚢発生の途上に多量の貯蔵でんぷん粒が観察される. それらは最初, 大胞子母細胞の細胞質中に出現し, やがて卵装置中に, また他にも, 不能の大胞子や反足細胞などの退化する細胞中にも見られる. 中でも伸長中の胚嚢腔には特に多量のでんぷん粒が蓄積されるが, 胚嚢が成熟期に入る直前に溶解し, 胚嚢は液胞化する. 成熟した胚嚢は西洋ナシ型であるが, この形は, でんぷん粒が溶解して胚嚢の浸透圧が上昇することにより形成されるのではないかと考えられる. Integumentary tapetum は胚嚢発生の早期には存在するが, その大半は胚嚢が西洋ナシ型に膨脹するさいに退化する.

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