1966 年 79 巻 940-941 号 p. 619-625
発芽時のヒマ (Ricinus communis) 種子の胚乳から得られた 3,000g 沈殿顆粒, ミトコンドリア顆粒(12,000g 沈殿), ミクロゾーム顆粒 (105,000g 沈殿) および上澄分画 (105,000g 上澄) における脂肪酸生合成能を acetate-1-14C から長鎖脂肪酸への放射能のとり込みによって測った. その結果, 脂肪酸の生合成能 (分画の単位タンパク量あたりの活性) は3,000g 顆粒がぬきんでて高く, 他の分画では非常に低い. この点, ミトコンドリア顆粒に局在する, 成熟時のヒマ種子の脂肪酸合成能と異なる. そればかりでなく, 発芽種子の 3,000g 顆粒は成熟種子のミトコンドリア顆粒と代謝経路の点でも差異がみとめられる. 発芽種子の 3,000g 顆粒では, 1)最大の脂肪酸合成能を得るには, CoASH, ATP, MnCl2, KHCO3, NADH および NADPH 発生系を添加する必要がある, 2) 嫌気条件下では脂肪酸合成能がかなり低下する, 3) 生成長鎖脂肪酸-14C として, palmitoleic acid (C16:1, Δ9), palmitic acid (C16:0) およびvaccenic acid (C18:1, Δ11) が多い. これらの事実から 3,000g 顆粒による酢酸から長鎖脂肪酸への生合成系として次の経路が示唆される. Acetic acid-→<CoASH>acetyl-ScoA-→<CO2>(malonyl-SCoA)→→→ palmitate -→<O2>palmitoleate-→<C2>vaccenate