植物学雑誌
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二次遷移初期に出現する種の種生態 I
林 一六沼田 真
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1967 年 80 巻 943 号 p. 11-22

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抄録

1) 遷移のメカニズムを解明するために, 二次遷移初期の群落を構成する主要な種の種生態的検討をこころみた. そのためには, まずわが国中部における二次遷移初期群落の構成種14種を選んで, 種子とその発芽の特性を調べた. さらに発芽試験のさいにみられる諸問題を整理し, 生態学的問題点を指摘した. 2) 実験によると, 二次遷移の出発点 (裸地化の第1年度) の群落を構成する第一次先駆種は, 種子重量が, 比較的重く, 発芽については後熟の進行がおそく, 低温による前処理がいちじるしく促進的にきくことが明らかになった. ところが第2年度に優占する第二次先駆種というべきヒメジョオン, オオアレチノギクなどは, 短い後熟期間でも常に高い発芽率を示し, 低温処理, 埋土処理の効果がなかった. 3) 第一次先駆種の中でも, とくにブタクサ種子では, 低温処理は種子集団の発芽に一斉性を与え, より長い処理期間は低温領域の発芽を促進した. 4) 以上の結果から, わが国中部の二次遷移の進行のメカニズムは次のように説明できる. すなわち, 二次遷移の出発点である裸地の環境は, 埋土種子集団の中から発芽するエノコログサ, ブタクサの芽生えに有利に作用する. その結果成立する上記の種の優占する群落はその環境形成作用 (土壌水分条件の安定, 土砂の移動をおさえる働き, 初年度の先駆群落の保護作用) によって次の遷移段階で優占するヒメジョオン, オオアレチノギクなどを群落内に生育させるようになる. 夏から秋にかけて発芽したそれら第二次先駆種はロゼット型で越冬し, 翌春発芽態勢にあるブタクサなどを抑えて生育し, ブタクサ群落など初年度の群落からヒメジョオン群落など第2年度の群落へ遷移が進行する.

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