植物学雑誌
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水生植物群落の生産力についての生態学的研究 III
沈水大型植物の日光合成量におよぼす水深の影響
生嶋 功
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1967 年 80 巻 944 号 p. 57-67

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抄録

光合成-光曲線と水面または水中における光の強さの日変化を組みあわせて, 任意の水深にある水中の緑色植物の1日の光合成を天気や湖水の透明度または吸光係数を考慮してもとめた. 日総光合成量-水深の関係を生理的要因 (光合成や呼吸の能力) と環境要因 (日最大水平照度, 日照時数や水中照度) の関数として (8), (9) 式でしめした. この式がしめす理論曲線は自然でみられる沈水大型植物や湖沼•海洋の停滞期にみられる植物プランクトンの1日の光合成量の垂直分布によくあった. 水中の緑色植物の補償深度は, それらが生育している水体の透明度によく対応するというこれまでの経験的法則に対して, 理論的な根拠をあたえた. 春から秋にかけての晴天下での日補償深度はグラフから (図7, 8), 冬の晴天および四季をつうじての曇天•雨天での日補償深度は (16), (17) 式から理論的にもとまる. このようにしてもとめた日補償深度は吸光係数に反比例し, 透明度に比例する. 琵琶湖に生育する Elodea occidentalis について月平均の補償深度/透明度の値 (上の関係における比例定数) をもとめると1月は2.0, 4月は2.4, 7~8月は1.4となった. Chlorella ellipsoidea についての補償深度/透明度の値は, 1月の雨天の0.9から7~8月の晴天における2.5の範囲にあった.補償深度が透明度のほぼ2倍の水深に一致することは注目される. 群落下層部の葉茎の日総光合成量や日呼吸量は群落上層部の葉茎のそれよりも小さい値であり, とりわけ光合成能の低下は著しい. このことからも群落全体についての日補償深度は, 単に群落上層部の葉茎のみから算出した深度よりさらに浅い位置にあると考えてよい.

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