植物学雑誌
Online ISSN : 2185-3835
Print ISSN : 0006-808X
ISSN-L : 0006-808X
培養細胞の分化の研究 I
ナスのカルスからえられた3系統の胚形成
山田 卓三中川 裕子篠遠 喜人
著者情報
ジャーナル フリー

1967 年 80 巻 944 号 p. 68-74

詳細
抄録

先に TradescantiaPaeonia のカルスは混倍数性をしめし,細胞学的には不均一な細胞集団であることをたしかめた. このカルスの不均一性が個体の変異となってあらわれるかどうかをたしかめるためにナスを用いて器官の誘導をこころみてきた. ナスは真黒 (B) と関東青 (KA) の二つの品種を用いた. Bカルスは1961年6月に胚よりカルスをえ, 1963年分離した二つの系統, すなわち一つは光条件下で葉緑素を形成し “胚” をつくる系統 (BD), 他は半透明のカルスで増殖率はよいが葉緑素形成を “胚” 形成もみられない系統 (BND) であり, KAカルスは1965年に胚より分離したもので基本培地の上では “胚”.形成はみられないが葉緑素を形成する. この3系統を用いてオーキシン, カイネチンその他の条件のもとにおこなわれる器官形成の状態をみた. BDは基本培地の上に “胚” を分化し, オーキシンで “胚” の形成を或る程度調節でき, KAは光条件下でIAAとカイネチンとの適当な組合せの範囲で芽を誘導することができる. BDは種子胚と同様な胚形成をおこない, KAは芽の原基の形成にさきだって球形のプロトコーム状のコロニーを多数生じ, これに原基がつくられて不定芽となる. BNDでは芽の誘導は現在のところ成功していない. 培養細胞は変りやすい. BDの “胚” 形成能は選択によって維持され, 分化しやすいカルスと分化しないカルスとが分離してくる. 誘導は種類によってはもちろん, 同一種類でも系統やカルスの古さによっても条件が異るので, 誘導過程の一般理論化を困難にしている. 現在までにナスではカルスより育成した個体について変異植物はえられていない.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本植物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top