植物学雑誌
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種子発芽期におけるプロトヘミン体の分布とその変動
森 久子
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1967 年 80 巻 944 号 p. 75-85

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抄録

ミトリサンゲ Vigna sesquipedalis の発芽期間中に, 各器官のプロトヘミン体が, どのような変化を示 すかを, カタラーゼ, ペルオキシターゼおよびプロトヘミンについて, それぞれ適当な定量法を考案して調 査した. 測定された酵素能, およびヘミン量を個体当り, 乾量当り, 酵素能比 (カタラーゼ/ペルオキシターゼ), 酵素能のヘミン量換算値で検討した結果: (1) 子葉は幼葉と同じく, カタラーゼが著しく強く, 葉性器官の性格が顕著で, 根部と対照的である. (2) 上, 下胚軸は同じ傾向を示し, ただ上胚軸が伸長開始すると, 下胚軸は発育が停り, ヘミン量も, ペルオキシターゼ能, カタラーゼ能も, 頭打ちとなる. (3) 幼葉, 幼根は共に発芽期間中急速にヘミン濃度が増大する. 全ヘミン中, カタラーゼの占める部分は, どの器官も非常に小さいが, ペルオキシダーゼは幼葉や根では, 略50%に達する. (4) 子葉は貯蔵物質を失って小さくなるが, 全ヘミン量は一定のレベルを保つ. したがつて後期には濃度として葉の程度まで濃縮される. 子葉ではペルオキシターゼの割合が特に小さい. しかし子葉の著しいb型チトクロム帯とそのNOとの反応性などから子葉には多量の低い酵素能しか持たないペルオキシダーゼ類似のb型チトクロームが存在すると考えるべきであろう. (5) 子葉のカタラーゼは, 発芽前期に甚だ強大となり, 後期に激減する. この強大なカタラーゼの消長は, 子葉の発芽初期後期でチトクロム型, 硝酸還元能, 脱水素酵素能などの顕著な代謝系の転換と関連するものであろう.

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