植物学雑誌
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カワノリの細胞壁に関する組織化学ならびに化学的研究
武田 宏西沢 一俊三輪 知雄
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1967 年 80 巻 945 号 p. 109-117

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抄録

カワノリを含む Prasiola 属はいろいろな点でその分類学上の位置が問題とされてきた•アオサ科に近縁のものと考える見解もあったが, その形態的な特徴から一時はアマノリ属などに類縁があるともされた.しかし一方, 形態的な特徴や配偶子の性質などから, Schizogoniales 目として独立させた方がよいという意見もある. 三輪は, 緑藻のあるなかまでは, その細胞壁の化学的性質がそれらの分類学的な位置と密接な関係のあることをみていることと, カワノリの細胞壁成分の大まかなところを以前分析し, 非常に注目すべき結果を得ていたことなどから, 今回さらにこの藻について詳細な細胞壁の分析をおこなった. その結果では, 電子顕徴鏡などからの知見に基くと, カワノリの細胞壁は従来3層と考えていたものが, 少くとも4層から構成されていることがわかった. 主成分はアマノリ属にはあるがアオサやアオノリには存在しない一種のマンナンであったが, そのほかに, 少量ではあるがアマノリ属にはみられないセルロースとかラムノースを含む多糖の存在が確認された. またアマノリ属にみられるガラクタンは, カワノリにはみられなかった. これらのことから, カワノリは West などの見解のように, Schizogoniales として独立させた方が妥当だという結論が得られた.

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