植物学雑誌
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縞枯山の植生についての生態学的ならびに 生理学的研究 VI
Abies 幼樹群落の生長と物質生産
木村 允本谷 勲宝月 欣二
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1968 年 81 巻 960 号 p. 287-296

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抄録

縞枯山の縞枯部に成立する約15年生の Abies 幼樹林において, 生長と物質生産量, 呼吸および枯死による物質消失量を測定した. 季節をおったサンプリングにより新成器官の生長経過をみると, 芽の展開は6月末にはじまり, 新葉の生長は8月末にほぼ完了するが, 新枝の生長は10月末までつづいた.
生育期間の終了後の生体量は 3.3kg d. w./m2であり, この年の純生産量は 0.74kg, 乾物増加量は0.52kgであった. この地方の成熟林で得られた結果と比較すると, 純生産量はその 65%に達し, 葉と枝の生産量は両群落でほぼ等しい. 両者の差は主として幹の生産量の差異による.ここに幼令林の特徴の一部がみられるようである.
各器官の呼吸速度の季節変化を測定することによって得られた群落の年間の呼吸量は, 乾量に換算して1.25kg/m2 であった. したがって年総生産量は1.9gkg/m2であり, 純生産量はその37%に相当する. 成熟林においてはこの割合は30%程度になると推定された.

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