植物学雑誌
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ハッショウマメのめばえにできるカルス の生理学的破究V
上胚軸のカルス形成部位における呼吸系の変動
諸橋 征雄駒嶺 穆下郡山 正己
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1968 年 81 巻 961-962 号 p. 362-370

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抄録

暗所で育てたハッショウマメのめばえの上胚軸を先端から5cmの所で切断すると, すでに報告したように, 切断後も引続き暗所においた場合 (暗条件) には, 切断面にカルスが形成されるが, 切断後明所においた場合 (明条件) には, 形成されない. この切断面から2mmまでの切断部でみられる生理的変化を, 特に呼吸代謝径路の変動という点に注目して, 明条件と暗条件とについてしらべ, 次のような結果を得た.
1. グルコース-U-14Cからの14CO2放出速度は, 明暗いずれの条件下でも切断後増加するが, 特に暗条件下で著しい.
2. 暗条件下では, グルコースからのCO2放出に対するマロン酸阻害率は, 切断後1日で急激に減少するが, 明条件下では, そのような激しい変化は認められない.
3. 暗条件下での呼吸の増加は, ほとんどマロン酸に insensitive な呼吸径路の増加によっているが, 明条件下でのそれは, sensitive なものと insensitive なものとの両方によっている.
4. マロン酸阻害率の変化と平行して, C6/C1比も暗条件下では切断後1日で急速に減少し, 明条件では,それほど顕著な変動はない.
これらのことから, カルスが形成される暗条件下では, 切断後1日で切断部に顕著な呼吸系の変動がおこり, ペントースリン酸径路の活性が非常に大きくなるが, カルスが形成されない明条件では呼吸系の変動は比較的にゆるやかであることがわかる.

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