1968 年 81 巻 961-962 号 p. 377-384
バラの栽培品種 Happiness (赤色種) と BonneNuit (黒色種) の花弁の酸性抽出液の透過曲線を調べた.
これらの抽出液の最小透過波長は, 加温 (68-75°)により508mμから502mμに移動する. また,これらの抽出液の室温における最小透過波長は, 赤色花弁の色素の主成分であるシアニンの酸性溶液のものより約6mμ長波長側にずれている. このことは, 花弁抽出液における Co-pigmentation の可能性を暗示する.
さらに, 透過曲線の比較検討から, pH3.0の抽出液はアントシアンに対して深色効果と濃色効果とを示すのに反して, pH1.0の抽出液は深色効果のみを示すことが認められた. 他方, 透過曲線の色彩学的計算から, この抽出液は赤色効果をもつといえる.
赤色種と黒色種の花弁抽出液の透過曲線間では,その形状に明瞭な差異は見られなかった. このことは, バラ花弁の黒色性発現には Co-pigmentationの関与がないことを暗示する.
明らかに透過曲線の移動を示す資料からは, フラボン類, タンニン類および数種の金属元素 (K, Na,Mg, Fe, Al) が検出された. これらのうち, フラボン類とカテコールタンニンとは透過曲線の移動に無関係であるが, ピロガロールタンニンは何らかの形で関与していると考えられる.