植物学雑誌
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アカマツ及びカラマツの芽生えにおけるリンの収支
武藤 信子
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1968 年 81 巻 965 号 p. 535-544

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抄録

生長様式を異にする植物の, それぞれの生育過程において, 生理的活性を表徴するリンの動態を, 生態学的観点から解明する目的で, アカマツ (常緑針葉樹) 及びカラマツ (落葉針葉樹) について, 種子より2年目 (8月まで) までの, 各器官のリン含有量, 及びその収支が, 野外条件下で, 検討された.
両種とも, 乾重量に対するリン濃度は, 葉において最も高く, その変動の幅は, カラマツの方が大きい.乾重量, 並びにリン含有量の季節変動は, 落葉現象 (カラマツ) に伴って, 若干の相違がみられるが, 生長の過程から考察すると, 基本的には, 両種とも, 共通の様相を呈する.
即ち, カラマツにおいて, 落葉時, 乾重量の著しい減少にもかゝわらず, 個体当り全リン含有量はほゞ一定に保たれることから, 落葉に先だち, 葉の中のリンの殆どが, 他器官へ回収された, と考えられる. 生育開始時の急速な新器官の生長は, このように保持された旧器官からの供給に負うところが多く, アカマツでは, 新器官に供給した後で, 旧葉は枯死する. 両種とも, このようにして新器官に供給される量は, 前年に蓄積された量のほゞ1/2であった.

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