1969 年 82 巻 968 号 p. 69-75
低温処理によって休眠の打破されたシュウカイドウ (Begonia evansiana) およびナガイモ (Dioscorea batatas) の地上塊茎の発芽に対する d-アブサイシン酸 (d-ABA) の影響を調べた. 塊茎の上半切片を ABA を含む培地で培養した場合, ABA は3×10-6-10-5M の濃度で発芽をおさえ, 10-6Mでは, 場合 によっては, 発芽を促進した. ナガイモの塊茎切片も, やや微弱ながら同様の反応を示したが, インタクト のナガイモ塊茎は ABA の影響を全然受けなかった. ナガイモの反応性が低いことの原因を知るために, ABA が塊茎組織によって不活性化されるかどうかを調べたが, 17時間の塊茎スライスとのインキュベ イションによっては, ABA の不活性化は全然認められなかった.
シュウカイドウの腋芽と頂芽を ABA (1μg/bud/day) で44日間にわたって処理したが, 長日条件下で 地上塊茎を形成させることはできなかった. また花芽形成の促進も認められなかった.