植物学雑誌
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バラ花弁の•色調発現の研究 (第9報) 桃色系花弁におけるアントシアンの 量的効果
安田 斉
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1971 年 84 巻 994 号 p. 256-260

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抄録

桃色系の栽培バラには,淡桃色の花をつける品種 (Tiffany, Confidence, Queen Elizabeth, Pink Lustreなど) と, 濃桃色の花をつける品種 (Eden Rbse, Pink Peace, Wendy Cussons など-いわ ゆるローズピンク種)とがある. 本報では, 両品種 の花色の間にみられるアントシアンの量的効果を検 討し, 合わせて既報3) の赤色系バラの花色との関連 性を考察した.
用いた花弁の主色素は, ペーパークロマト法によ りシァニンと同定された.シァニン含量は,淡桃色 品種では1.5~10μg/cm2,濃桃色品種では20~80 μg/cm2で, 既報の赤色系バラ花弁の場合 (100~900μ9/cm2) と合わせると,シアニン含量の増大 によって花色は
淡桃色→濃桃色→赤色 の順で変化する.
しかし, 花弁抽出液の透過曲線および桃色系花弁 の反射曲線から計算した色度座標x,yと, 色素量と の関係を検討すると, 次の可能性が示唆され, 色素 含量の大小だけでは説明できない点がある:
1) 赤色系品種と淡桃色品種の花色の関係はアン トシアンの量的効果で説明できる.
2) 赤色系品種および淡桃色品種と, 濃桃色品種 との花色の関係は, 色素の量的効果だけでは説明で きず, 濃桃色品種では何らかの原因による青色効果 も加わっている.

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