日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
原著
特定健診での慢性腎臓病検出における血清クレアチニン測定の意義
篠原 陽一
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 101 巻 1 号 p. 25-28

詳細
抄録

(目的) 2008年4月より特定健診が開始された.特定健診に尿蛋白は含まれるが,血清クレアチニンの測定が省略されている.これは高血圧や糖代謝異常を指摘された者に特定保健指導や受診勧奨をおこなえば,腎機能障害の拾い上げは可能であるとの見解に基づいている.特定健診でのCKDの拾い上げが可能であるかを検討した.
(対象と方法) 検尿,血圧,血糖および血清クレアチニンの測定を行った931例を対象とした.特定健診では尿蛋白陰性のためにCKDと判定されない者のなかに,腎機能障害がどの程度含まれるか調査した.
(結果) 931例中169例が尿蛋白陽性であった.尿蛋白陰性であった762例のうち226例でeGFR<60ml/min/1.73m2の腎機能障害を認め,尿蛋白検査のみでのCKDの見逃し率は57.2%(226例/395例)であった.この226例のうち高血圧かつ/または糖代謝異常を有する者で血清クレアチニンを測定すると,新たに156例の腎機能障害を拾い上げることができ,見逃し例を70例(17.7%)まで減少できた.しかしその感度,特異度はそれぞれ69.0%,43.7%に留まっており不十分であった.
(結論) 特定健診でCKDを拾い上げようとすると395例のうち226例(57.2%)を見逃す結果となり,血清クレアチニン測定の必要性が示唆された.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本泌尿器科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top