日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
原著
山形県庄内地方における泌尿器科新患患者の癌告知に関する14年間の意識調査
柿崎 弘黒田 悠太柴崎 智宏中野 裕子金子 尚嗣細谷 法之櫻井 俊彦内藤 整武藤 明紀加藤 智幸冨田 善彦
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 101 巻 4 号 p. 585-591

詳細
抄録

(目的) 1990年代前半,厚生省が行った「病名の情報開示」についての調査結果によると,癌告知を直接患者に行っている率は20.4%と低く癌告知は一般的なものではなかったが,現在では多くの患者で癌病名を伝える時代になっている.実際に1990年代前半と比較して現在の患者自身の癌告知に関する意識が変化しているのかを検討した.さらに,年齢,性別,癌家族歴の有無,喫煙歴の有無により癌告知に関する意識に違いがあるのかを検討した.
(対象・方法) 対象は1993年から2007年まで日本海病院(現日本海総合病院),泌尿器科外来をはじめて受診した患者のうち,アンケートを依頼した10,552名である.質問内容は以下の通りである.「自分が癌と診断された場合,癌病名を知りたいか」,「家族が癌と診断された場合,癌病名を本人に教えたいか」.回答は以下の4つから選択してもらった.1)告知を無条件に希望,2)治癒の見込みがある場合告知を希望,3)告知を希望しない,4)その場にならないとわからない.初診の時期,年齢,性別,癌家族歴の有無,喫煙歴の有無と癌告知の希望状況を検討した.有意差検定はノンパラメトリック検定で行った.
(結果) 有効回答率は約80%であった.全体では自分への癌告知希望者(無条件の告知希望:45.2%,治癒の見込みがある場合希望:26.3%)は71.5%,告知を希望しないものは9.2%,家族への癌告知希望者(無条件の告知希望:24.7%,治癒の見込みがある場合希望:30.5%)は55.5%,告知を希望しないものは14.9%だった.年代が新しくなるにつれ自分への癌告知を希望しない率は下降した(1993~1995:11.5%,2005~2007:8.0%,p<0.05).家族への癌告知を希望しない率も下降した(1993~1995:18.6%,2005~2007:11.0%,p<0.001).若年者,男性,喫煙者ほど癌告知を希望する率が高かった(いずれもp<0.001).癌家族歴があるほうが自分への癌告知を希望する率が高かった(p<0.01)が,家族への告知は希望しない率が高かった(p<0.05).
(結論) 年代が新しくなるにつれ癌告知を希望しない率は低くなってきた.家族に対しても以前より告知を否定する率は低下してきた.本人の希望と意思をもとに治療の選択を行うためにも,癌告知は必要なものという認識が浸透してきたと考えられる.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本泌尿器科学会
次の記事
feedback
Top