日本泌尿器科学会雑誌
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総説
我が国における職業性膀胱癌の歴史と現状
松島 正浩桑原 孝
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2013 年 104 巻 4 号 p. 569-578

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抄録

(目的)我が国の職業性膀胱癌の歴史と現状,及び膀胱癌の化学発癌研究歴と現状について検討した.(対象と方法)化成品工業会の資料と厚生労働省労働基準局労災補償部の資料を中心に症例を検討し,更に文献的考察を行った.(結果)我が国では1920年頃より芳香族アミンの製造が開始され,1940年に最初の職業性膀胱癌症例が報告された.1955年に中共貿易による業界の起死回生策で芳香族アミンの最大生産量時期に到達した.1972年に安全衛生法発令によりbenzidine, 2-naphthylamineの製造・輸入が禁止された.この間に3,310名がこれらの物質に暴露し,1985年までに357名の職業性膀胱癌が発生した.労災補償が開始された1976年から2006年に認定された数はbenzidineに曝される業務による尿路系腫瘍341例,2-naphthylamineに曝される業務による尿路系腫瘍150例,o-dianisidineによる尿路腫瘍1例の合計492例である.職業性尿路癌患者はほぼ定年を迎えており,2025年頃に終焉を迎えると推測する.(結語)我が国における芳香族アミン暴露者3,310名より発生した職業性膀胱癌の歴史と現状を報告し,文献的考察で最近の職業性膀胱癌の動向について解説した.

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© 2013 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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