2016 年 107 巻 1 号 p. 21-27
(目的)急性複雑性腎盂腎炎(ACPN)は,敗血症性ショック(SS)に陥る致死的疾患であるが,重症化の予測因子は明らかではない.そこで,SSを合併したACPN患者のリスクファクター(RF)を明らかにする.
(対象・方法)対象は2009年5月から2014年3月にACPNで入院した267例.SSを合併した患者群とその他の患者群の2群に分け,背景因子を後向きに比較検討した.また,多変量解析を用いてRFを検出し,重症化予測のためのスコアリングシステムを作成した.
(結果)267例のACPN患者のうち,敗血症患者は167人(62.5%)で,死亡例は2例(0.75%).SS合併群は35例で,SS非合併群は232例.2群を多変量解析し,(P).Performance Status≧3,(U).尿管結石の存在,(S).女性,(H).水腎症ありの4因子が有意差を得た.これらのRFを各1点とし,合計0~4点のPUSHスコアリングシステムを作成した.PUSHスコアはSSの合併率と相関し,0点:0%,1点:5.3%,2点:3.4%,3点:25.0%,4点:42.3%であった.PUSHスコア3点の患者群は1~2点の患者群に比較しSS合併率が有意に高かった(p=0.0000036).
(結論)4項目のRFを用いたPUSHスコアによる評価方法は,ACPN患者のSS合併予測に有用と考えられた.