日本泌尿器科学会雑誌
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原著
骨盤臓器脱手術後の腹圧性尿失禁に関する検討
寺本 咲子成島 雅博小嶋 一平高木 康治下地 敏雄
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2016 年 107 巻 2 号 p. 100-105

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抄録

(目的) 骨盤臓器脱手術後の腹圧性尿失禁について,下部尿路の形態と機能,尿失禁手術の治療効果に関する特徴を検討した.

(対象と方法) 腹圧性尿失禁に対して尿失禁手術を行った症例のうち,術前評価が可能であった骨盤臓器脱手術後の61例を含む125例を対象とした.年齢,出産回数,BMIの平均はそれぞれ64.9歳,2.2回,24.4であった.対象患者のうち骨盤臓器脱手術後の61例を骨盤臓器脱手術あり群,残りの64例を骨盤臓器脱手術なし群と定義した.全対象患者に対し腹圧性尿失禁の術前評価として60分パッドテスト,鎖膀胱尿道造影(chain CG),尿流動態検査(UDS)を行い,尿失禁手術は中部尿道スリング手術を施行した.術前評価項目,治療成績について2群間で比較検討を行った.

(結果) 骨盤臓器脱手術あり群はなし群に比べパッドテストで尿失禁量が有意に多く,chain CGはBlaivas分類でtypeIIIが有意に多く,UDSは最大尿道閉鎖圧(MUCP),機能的尿道長(FPL)がいずれも有意に小さい値であった.さらに尿失禁手術後の治癒率は骨盤臓器脱手術あり群がなし群に比べ有意に低かった(78.7% vs 92.2%,p<0.05).

(考察) 骨盤臓器脱手術既往のある患者は腹圧性尿失禁が重度で,尿道機能が低下していた.また尿失禁手術後の治癒率は低下していた.尿失禁手術を施行する際にはこのことを念頭におく必要があると考えた.

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© 2016 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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