2016 年 107 巻 3 号 p. 155-161
(目的) 去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)症例に対する新規抗アンドロゲン受容体阻害剤であるエンザルタミドの治療効果とその安全性について検討した.
(対象と方法) 昭和大学病院,昭和大学関連7施設においてCRPCと診断された症例のうちエンザルタミドを使用した73例を対象とした.方法は160mg/dayを連日投与としたが,年齢,全身状態を考慮し担当医の判断で減量した.エンザルタミドによるPSA反応率,ドセタキセル(以後DTX)の使用の有無,前治療投与薬剤数による治療効果の差をretrospectiveに比較検討した.
(結果) エンザルタミド投与開始時の年齢中央値77歳,Gleason scoreの中央値は9であった.エンザルタミド投与開始時のPSA中央値は26.9ng/mlであった.エンザルタミド投与前にDTXを投与している症例は29例(39.7%)であり,総投与量の中央値は460mg/body(100~2,640)であった.エンザルタミド投与前の内分泌療法投与薬剤数の中央値は3であった.
前治療としてDTXを投与していない症例においてエンザルタミド投与後PSAが50%以上低下したものは27例(61.4%),DTX投与後の症例でPSAが50%以上低下したものは7例(24.1%)であった.有害事象は疲労18例(24.7%),食欲不振18例(24.7%),悪心12例(16.4%)であった.PSAのflareと思われる現象を認めた症例が4例あった.
(考察) CRPCに対するエンザルタミド投与によるPSAの変化はこれまでの報告と大きな差を認めなかった.PSA flareと思われる現象を認めており,1回のPSA上昇だけでは判断できない可能性がある.