2016 年 107 巻 4 号 p. 233-238
(目的) 精巣捻転症は,診断治療が遅れると精巣を喪失するため,臨床的社会的に重要な救急疾患である.近年,精巣捻転と外気温との関連が指摘されているが,その詳細は明らかでない.今回,急性陰囊症手術症例を後方視的に集計し,精巣捻転発症と外気温との関係について検討を行った.
(対象と方法) 対象は2004年10月から2014年10月までに精巣捻転症が否定できず,手術が行われた急性陰囊症105例.患者病歴より年齢・居住地域・発症日時・手術検査所見等の情報を収集した.発症日の外気温は,気象庁ホームページより居住地域に最も近い気象台のデータを用いた.χ2乗検定,ウィルコクソンの順位和検定,ロジスティック回帰分析で解析を行った.
(結果) 年齢中央値13(1~43)歳,患側は右側46例,左側58例,両側1例であった.術中所見で67例が精巣捻転症,38例が非精巣捻転症と診断された.発症日平均外気温は捻転群で中央値10.8℃(1.8~29.4℃),非捻転群で19.4℃(1.9~29.1℃)あり,捻転群で有意に低かった(p=0.006).精巣捻転症の割合は,発症日平均外気温が15℃未満の場合45/56(80%)で同15℃以上での22/49(45%)と比べ有意に高頻度であった(p<0.001).また平均外気温15℃以上でも,最高最低気温の差(日内気温差)が10℃以上の場合に13/21(62%)で,同10℃未満の9/28(32%)と比べ精巣捻転症が高頻度であった(p=0.037).多変量解析の結果,年齢・血清CRP値・発症日外気温が急性陰囊症手術症例中から精巣捻転症を予測する有意な因子であった.
(結論) 低外気温または日内気温差が大きい日の急性陰囊症は,精巣捻転症の可能性が高く,注意すべきである.